【第三章:風の狩場とカルマの谷 十三】

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「次は集中力や『出来る』という信念を、無意識に持続させることがポイントになってくる。  そのために便利なのが『呪文』だな」 「そういえば、テンさんも『天地神明……』とかなんとか言ってたような……」   「呪文には、大きく分けて二つの効果がある。  一つは神や精霊に対する敬虔さや、感謝の気持ちを表す事が出来ること。  もう一つは、邪念の入る余地がなくなることだ。  つまり祈りの集中力を高めるということだな」  オウコが頷きながら言う。 「それから、神様にお願いするときの定型文みたいなものかな。  ほら、『そこの黄色くてややカーブしたフルーツとって』って言うよりは、『そのバナナとって』っていう方が簡単に通じるでしょ」  ギンコが人差し指を立てて、にっこりと微笑む。 「ちなみに、オウコが言ってたのは、『あびらうんけん』。  阿・毘・羅・吽・欠が、地・水・火・風・空で、宇宙の万物全てを表して、それに助けを求めてるの。  それに、『成就』って意味の『そわか』で、叶えて下さってありがとう、っていう感謝を込める事で、呪文を完成させてるんだ。  で、老師が気爻波の時に言ってたやつは、『天地神明 陰陽和合 万物回帰 易為化生……』。 『てんちしんめい、おんみょうわごう、ばんぶつかいき、いいけしょう』。  天と地の全ての神々よ、陰と陽は和合し、万物は全てに還る。たやすく生まれ出でよ……。  みたいな意味だね。最後に八卦の特性を命ずる。  さっきのはボクらに例として見せてくれてたからあれだけど、老師なら呪文なしの無言でも、大技をバンバン打ち出せると思うよ」
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