【第三章:風の狩場とカルマの谷 十四】

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【第三章:風の狩場とカルマの谷 十四】

 その日の夜、子ネコたちとスズは、マヌルのテントの地下にある、学習室に集められていた。  岩イノシシ狩りについて学ぶためである。  部屋の天井や壁に掛けられた布には、この郷の外観やテント同様、幾何学模様で動物などのモチーフが描かれており、インディアンのドリームキャッチャーに似たようなカラフルな石のついた飾りなどが釣り下げられている。  教卓の上には、いくつかの小瓶と、刃物、石のブレスレットなどが置かれていた。 「さあ、これでみんなに『風火石(ふうかせき)』と『天山石(てんざんせき)』が行き渡ったわね!」  ウルルの美しい声が教室中に響いた。  今夜の講師であるウルルは、まず子ネコたちに、狩りに必要な持ち物から説明している。  魔術師ブラッドの母であり、この郷の首領マヌルの妻であるウルルは、『錬丹彫金師』でもある。  ここマヌルの郷で配られる魔神輪等の装飾品は、古くから伝えられる年季の入った物もあるが、彼女が手掛けた作品も多くあり、その繊細なデザインと精度の高さは、他国から買い付けに来る者がいるほどだ。 「『風火石』は別名、『家人石』。  その名の通り、家人、家族のように大事な者を守る石です」  ウルルは紅い珊瑚のような石のブレスレットを右手に掲げた。 「これは危険生物や狩りの対象など、退けたい相手には忌避効果を発揮し、家族や仲間など、守りたい対象にとっては結界となります」  光にかざすと、それは透明感のある濃いピンク色に見えた。  スズはふと気づいて、右隣に座るフーカを見た。彼女の風車のような髪飾りの色によく似ている。  フーカは「そうよ」という風に頷いた。
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