【第三章:風の狩場とカルマの谷 十四】

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「『天山石』の別名は『(とん)石』。  遁術、身を隠し、逃げるために使用します」  ウルルは今度は左手で、ターコイズグリーンのブレスレットを掲げた。 「こちらは、投げつけることにより土煙や水飛沫をあげ、敵の目をくらまして逃げる隙を作ったり、足場の形成や跳躍力の強化によって、緊急脱出の手段として使用します」  ウルルは真剣な表情でこう続けた。 「狩りで一番大事な事は、『死なない事』です。  二番目に大事なのは、『怪我をしない事』。  手に余る相手なら、始めから相手にしないのが正しい選択です。  もしもの時は、逃げて隠れて、身を守ること。  ですから、まずは自身の安全と退路の確保が大事です。  基本は協力して狩りを行うことによって皆の安全を確保しつつ、相手に気づかれない程の忍びの技によって確実に命をいただく事。  究極を言えば、相手には痛みも恐怖も一切与えず、死を死と感じる間もなく止めを刺す。  これが狩りの理想になります」  ウルルは胸に手を当て、教室中の皆の目を見て言う。 「もし、こちら側の誰かが死んだり怪我をすれば遺恨となり、恐怖や怒り、憎しみから、相手に執着する心が生まれます。  そのような復讐をしよう、相手を痛めつけようという気持ちで相手を殺そうとすれば、それは業、『カルマ』となります」  ウルルは、黒板に下がった絵の一つを示した。  そこには、旅人が一本の白く細い道を歩く姿が描かれている。  道の両側には底知れない深さの炎と激流の河の流れが描かれている。
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