【第三章:風の狩場とカルマの谷 十四】

5/6
前へ
/40ページ
次へ
「これはね、ボクら用のサプリメントみたいなもの。  糖分とか、ビタミンCとか、ネコたちは摂らなくて良いけど、ボクらには必要な成分がまとめられてる感じかな。  ビタミンCなんてさ、哺乳類で体の中で自然に作られないの、ボクらマレビトや猿とかの霊長類くらいのものなんだって。  退化してるか進化してるのか分かんないよね、人間って」  ギンコが苦笑しながら答える。 「フートの実もそうだけど、食事で普通に摂れる時は良いとして、狩りの途中で道に迷ったり、怪我して動けなくなったりして、自分では獲物が捕れない、もしもの時に備えての緊急食料としてね。  薬なんかも入ってるから」 「こっちは『清濾過丸(せいろかがん)』……。なんか聞いたことある響きのような……。  これってひょっとして、お腹痛い時の薬?」  スズは黒に近い茶色の薬丸の入った小瓶を示して、隣で暇そうにしているフーカに話を振ってみた。  子どもの頃からこちらの世界で暮らし、すでに岩イノシシ狩りの経験のある彼女は講習の必要はないが、むしろ子ネコたちの講師としてや、スズのお目付け役として傍にいることも多い。 「なっ……何であたしに聞くのよ!」  フーカは絶句したあと、真っ赤になってそっぽを向いてしまった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加