夜明けにはまだ遠い

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「お姉ちゃん、優菜死んじゃうのかな?」  白い顔を更に青白くして、双子の妹・優菜が言った。 「今日もね、4時44分に起きちゃったの。もう今週3回目だよ」 「バカね、そんな迷信信じちゃダメよ」  4時44分は、死神が通る時間。本で読んだらしいそんな話を、優菜はすっかり信じきっている。 「死神が、迎えに来ているんだよ。怖いよ、お姉ちゃん」  怯える妹を、私は優しく慰める。 「大丈夫よ、私がついているから、ね?」  数日後、優菜はあっけなく死んでしまった。元々心臓が弱く、学校へも行かず自宅療養をしていた優菜。パパやママから、いつも大切にされていた優菜。  これでパパとママも、私に優しくしてくれるかしら?  そう、優菜が死んだあの日、4時44分に白いシーツを被って、優菜の心臓が止まるほど驚かせたのは私。  それだけじゃない。連日4時44分に優菜が目覚めるように、こっそり物音を立てたりしていたのも、「死神が通る時間」の話が書かれた都市伝説の本を、優菜の本棚にしのばせておいたのも私。  あの日以来、私は鏡の中に自分の姿を見つけられないでいる。そこに映るのは、私ではなく優菜の姿……。  私と同じ顔をして、だけど恨めしそうに私を睨んだ優菜の姿。  そして今夜も、優菜はあの時間に鏡の中から出てきて、私の枕元に立つのだろう。  4時44分。  夜明けには、まだ遠い。
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