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篤樹と会うのは、主にわたしの家。
期間限定カップルなので、誰にも知られることなく期間終了を迎えるのが暗黙の了解だ。
手を繋いで出かけたり、おいしいものを食べに行ったりはできないけれど、二人で料理をしたり、高校の頃の思い出話にふけることも新鮮で楽しかった。
時間がない。
そう痛感していたわたしたちは、時間を惜しんでよく会った。
夜中、急に時間が出来たからと、今からいい?という連絡を寄越すことも何度かあった。
わたしは、部屋で過ごす時は邪魔な前髪をポンパドールにしていた。
「いつもは知的なイメージだけど、この髪型にするとすごく子供っぽいかわいい感じになる。こんな姿、オレだけが見てると思うと得した気分だね」
昔から変わらず、篤樹は素直でまっすぐなままだった。
褒めてくれたこともだが、篤樹が年月を経ても変わっていなかったことも嬉しかった。
あの頃、過ごせていたかもしれない時間を取り戻すように、存分に篤樹の名前を呼んで、キスをして、顔を見て笑って。
いずれは消えてしまう夢の時間。
それでもいい。どうせ夢なんていつかは忘れてしまうものだから。
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