第一章 日常

5/10
前へ
/87ページ
次へ
 四時限目終了のチャイムが鳴る。  先生が教室を出るのも待てず、生徒達が昼食の巣作りを始める。  教室を出て学食に向かう者。  連れだってフリースペースへ向かう者。  机を寄せ合い、お弁当を広げ始める人たち。  スマホをいじりながら、一人で惣菜パンをかじり始める人。  私は親友の典子(のりこ)の隣に移動し、机と机を寄せ合わせる。  典子が私を見上げ、少しだけ口元を緩ませる。  けれど、その瞳にはいつも暗い影が宿っているように見える。  相変わらず神秘の微笑だ、典子は。  私たちがお弁当を広げていると、セミロングの髪を弾ませ友稀(ゆき)がやってくる。 「あー、待って、待って」  と言いながら、前の席の机を反対向きにして、寄せ合わせる。 「慌てなくても、ちゃんと待ってるよ」と私。  典子は無表情のまま、友稀に対して頷いてみせる。  三人がお弁当を広げ終わると、友稀がそれぞれのオカズを見比べて 「今日も心美(こはる)は肉類が足りないな。そんなんじゃ育たないよ。ハイこれ」  と、自分のミートボールを私のお弁当に運ぶ。 「代わりに人参貰うね。典子は、またオニギリだけなの。しょうがないなぁ、大サービス でウィンナー上げるよ」  と盛んに私達の栄養管理をしてくれる。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加