第一章 日常

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「あれ!?」  と友稀が疑問の顔をつくる。 「心美。今日は、イチゴ牛乳はどうしたの? お気に入りなのに」  あぁ、いつも目ざといな友稀は…。 「えーとぉ」と私は言いよどむ。ちょっと言いにくいことなんだよな。  でも、胡麻化しても友稀には分かっちゃうだろうし、そもそも私は嘘が苦手だ。 「お金…、持ってなくて…」と応えると 「えーっ!?」と友稀が驚くが、次の瞬間には怒った顔になり 「あー、そういう事。心美! また誰かにお金を巻き上げられたのね、これで何回目?」  と小言を言われる。  ほんとに頭の回転が速いな友稀は…。何でも御見通しだ。 「…そうじゃなくて。財布を忘れてタクシーに乗ったお婆さんが居たんで貸してあげた」  と言い訳をしてみる。 「貸したって…。そうやって、見ず知らずの人にお金渡して、返ってきた試しが無いじゃ ない」  やっぱり、友稀に呆れられた。 「それは、いつも名前を言うの忘れちゃうから。きっと、相手の人も私を探してくれてる と思うんだけど…」 「全く。心美は人がいいんだから。美影さんも、そう思うでしょ」  話を振られてなんと応えるのかと、四つの瞳が典子に注がれる。  その視線に気圧されたのか、典子が消え入りそうな声で 「心美には…、困っている人を見つける才能があるんだと思う」  とつぶやく。  その答えが、全く見当外れだったので、私と友稀は顔を見合わせて笑った。   これが、いつもの私たち昼食の光景。  この光景が私の日常のシーンになってから、半年ほど経っている。
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