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私の名前は相川心美。
ごく普通の高校一年生…と、自分では思っている。
心が美しいと書いて『こはる』と読む。
自分でも気恥ずかしくなる名だ。
この名前を、初見で正しく読んでくれる人は少ない。
けれど、そのお陰ですぐに名前を覚えて貰えるので、心美という名は気に入っている。
この名前のせいなのか、私には変わった才能がある。
典子も言っていたように、私には困っている人を見つける才能があるようだ。
しかも、どうしても手を貸さずにはいられない。
時には、自分が損をすることもあるけれど、性格なんだから、どうしようもない。
私がこういう性分になったのには訳がある。
小学校4年生の夏、親戚の人たちが集まり、近くの河原でバーベキューをしていた。
その最中、私はトンボを追いかけていて足を滑らせ、川に流された。
いくらバタ足をしても、瞬く間に岸から遠ざかる。
助けを呼ぼうにも、息が出来ない。
視界が水と空だけで満たされていく。
ああ、これで私の人生は終わるんだ。驚くほど冷静に、そんなことを考えた。
その時、誰かが水の中で私を抱きかかえ、橋の下の茂みに引き上げてくれた。
助けてくれたのは男の人で、服が流されたのか胸がはだけていた。
その胸に、火傷の痕があったのを、今でもハッキリと覚えている。
私を探す親たちの声が近づいてくると、その人は黙って立ち去ろうとした。
私が
「名前を教えてください。お礼がしたいです」
と言うと、
「名は言えない。恩返ししたいなら、きみの周りの困っている人を助けて上げなさい」
と答えて、そのまま消え去ってしまった。
それ以来、困っている人を見かけたら、必ず手助けするようにしている。
そうすることで、また、あの人に会えるかもしれない。そう、思えたからだ。
やがて、人助けを繰り返すうちに、それが私の人となりになった。
周りからお人好しと言われる事もあるけれど、私はこんな自分でよいと思っている。
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