1. わ た し

2/6
前へ
/20ページ
次へ
「起きな、咲菜(さな)」 布団の上から揺れが伝わってくる。 「いややぁー、むりー...」 「もう8時なんやから!いい加減にせえよ!」 「8時ー?」 だってさっき起きたときは6時半だったはず... そんな訳は... 頭の横の目覚まし時計はしっかりと「8」と「12」を指していた。 「うわおぅ!!」 「だから()ったったのに...」 「遅れる遅れる!」 机に置かれた目玉焼きを呑み込み、水で黄身の味を流し込み、そのまま洗面所へ向かってついていた目やにをとって顔を洗い、歯磨きを20秒で済ませて寝癖を整える。 ここまで約2分。 「あんた、普通顔(あろ)てからご飯やろ...」 服を着替え、帽子をかぶって、 「いってくるわ!」 と半ば叫び気味に家を飛び出す。 まずいまずい遅れる遅れる。 「きいつけんなー!」 母が大声で言う。 とりあえず、遅刻を免れるために頑張って走った。 「ほんまに女子なんか?あの子は...」 と母がため息交じりに言ったのを私は知らない。 「あ、あの子弁当忘れていったわ。はぁ...」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加