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「これ偏見に入るんだけど、駒枝先生って彼女はいなそうな気がするな。」
「えー! 何でそう思うんですか?」
「女の勘?ただの予測だからそんなに気にしないで。」
「もう。ドキドキさせないでくださいよー。」
「ごめんごめん。」
テキパキと点滴を入れ替える動作とは打って変わってナースさんの顔はほころんでいた。
嗚呼、この人は駒枝先生のことが好きなんだろうな。
ふとゴミ箱の中の紙パックが目に入る。
さっき自販機で買ったピーチティーだ。
あの甘みが口の中で思い出される、それと付属しておしるこを奪っていった駒枝先生の憎たらしい態度とかも思い出しちゃったり。
…きっと彼女からしたらさっきの出来事は羨ましいことなんだろうな。
人間って欲張りだ。
ううん、小泉君が言ってたように世界は広いんだから当たり前か。
私が嫌と思うことを嬉しく思う人だっているわけで、そんな対照的な二人が今同じ部屋に存在している。
これだって運命的だ。
こんなことに運命感じちゃうなんてメンタルきてるのかな私。
高さ5mmにも満たない約束の輪が夕日でオレンジみを帯びている。
ナースさんが「その指輪やっぱりすごくきれいですよね。」って褒めてくれた。
そうかな。
本心的に言えば私の心はまさにそうだった。
歳をとったらわかる。
運命的な出会いってそうそうないし、この指輪よりも運命を感じさせるものって絶対あるってこと。
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