運命のタイミング

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するとさっきのナースさんが前方から歩いてきた。 彼女の顔がほころぶのはこの距離からでもよくわかる。 オレンジ色の光が白いナース服に反射して拡張した表現だけど私には天使に見えた。 あんまりにも可愛らしいからこちらもほころんでしまう。 天使に軽く会釈すると返してくれた。 「駒枝先生。あのナースさん可愛いですね。見てて元気になりませんか?」 「それがですね、あいにく人を見て元気になれる性分ではないのです。面白いでしょう。」 「…お、趣深いかな。」 「そんな人間なので婚約する人の気持ちもあまりよくわからないんですよね。」 彼の冷たい眼差しが婚約指輪に突き刺さる。 「…まあ、当事者の私も実感とか世間でいう幸福感とか薄い方です。私にとってコレは約束を物質化したものというか。」 「なるほど、面白い考えですね。小泉先生とは真逆な思想だ。」 小泉君の思想? 「小泉君も結婚願望とかあるんですかね?」 「さあ? ただあの人は真面目な人なので貴方みたいに強くはないと思いますよ。ないものを長い目で育てることはできるたちじゃないでしょうし。」 「………。」
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