微笑みを忘れないで

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春が通り過ぎ始めたとはいえ、日陰廊下はひんやりとしていた。 入院用に揃えた年相応な地味パジャマは良い仕事をしている。 ポッケに忍ばせてある500円玉もひんやりとしているから勢いよく自販機に投入。 大好きなピーチティーは幸いにも下段にあったがパイナップルジュースは悲しいかな、一番上の段にある。 「…仕方がない。親切な人をまとう。」 慣れた手つきで飲むピーチティー。 この飲料とは中学時代からの付き合いだからなかなか感慨深いものがある。 14歳の私へ、相棒のピーチティーはアラサーになっても手放せておりません。 チューチューチュー。 「今思えば、会った時って小学生だったんだね。あんころまんみたいな顔してたな。絶対言えないけど!」 戦闘服みたいなセーラー服によくピーチティーこぼしそうになったっけ。 あれは私わざとだったのかな?もう忘れちゃったけど。 あの頃の私は毎日に必死であんころまん小学生はちょっとした癒しだった。 あの子の透き通った瞳に映るものはなんだろう? 口元についた茶色いのはソースかな? 私にとって、殺伐とした日々の妖精みたいな感じかしら? 「…そうだ。これにしよう。」 下段の一番右側のドリンクボタンからいとも簡単に生まれるソレ。 暖かくて生命を感じそうだ。 ってアラサーの発想力じゃないわな。
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