愛は萌えで十分だ

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「私ね。本当はくるつもりはなかったんだ。ただ何というか来なくちゃいけなかっただけなの。でも吉田さんはそうじゃない。楽しみで仕方なかったと思う。気持ちが落ち着けばいまみたいなことにはならないって思う」  近藤くんは寂し気だ。 「米田さんは……大人だね。脈ナシ、かあ」  それでも微苦笑する顔はどこかふっきれている。 「うん。私は好きな人や物事が沢山あって、それしか見てないから、いまは恋愛とか考えてないんだ」  今日初めて本音をいえた。これで十分だと思う。私は椅子から立ち上がって近藤くんに笑顔を向けた。 「嫉妬ってね。寂しいからなの。そういうことを話すといいと思う。近藤くんが知らないことがきっとあるから。元気でね。話しかけてくれてありがとう」 「米田さんも元気で。――ありがとう」  そのまま広間をあとにした。嫌だったけど楽しいひと月だった。  家族に感謝してタクシーに乗車した。 「秋葉原までお願いします」  ――さてと。同人誌でも買って帰ろう。
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