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何の拷問か。いや五十万をドブに捨てるようなものだ。
「おばあちゃんが出してくれたの。杏子の綺麗な姿が見たいねぇって」
なんという卑劣な手だろう。私がおばあちゃんっ子なのを見越してこれか!
「……あ、あのね。お母さん。ぶっちゃけどこから手を付ければ『まとも』になるかさえ、銀河の向こうレベルで未知の世界なんだ。もったいないから、みんなでご飯食べに行くとかにし……」
「エステ! ヘアメイク! スタイリスト! プロの手を使い倒せばいいでしょう。誰もあんたに自力でやれとはいわないわよ。いうだけ無理だし無駄だし虚しいから」
人は怒られる内が華かもしれない。虚しいとはなかなかパンチが効いている。
しかも三段階ときた。黒い三連星のようだ。しかしここで引いたら地獄が待っている。
「そもそも、そういうのさえ見当つかないしね、ホント。だからね……」
「お母さんが手配します」
「ファ?」
妙な声が出た。
「ネットですべて目星をつけています。あんたは黙って従えばいいの。おばあちゃんの! ために!」
おばあちゃんのところをやたらと強調していう。
「それでも嫌なら、この五十万で賃貸借りて出ていきなさい。保証人の判子はついてあげます。お母さんは本気です」
「――そ、の、えっと……」
だらだらと嫌な汗が流れていく。
「いますぐ出席に丸をつけて、そこのポストに投函してきなさい。そうしたらいままでとおり、この家で暮らすのを許可します」
――デッドオアアラーイブ!
家を出れば萌えを手にする数が減ってしまう。それくらいならば一日仮死状態ですごす方が耐えられる。
萌えのためなら私は私を売る。コスプレイヤー心意気でいけばいい。
『一般女子』というコスプレだ。
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