愛は萌えで十分だ

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 私は葉書を投函した。母親の付き添いで。  ほとほと信用されていない二十六歳。原因は自分なので諦めた。夜は推しの抱き枕を抱いて眠った。  翌日の夜、帰途に着いた私にさっそくネット予約したという母がスケジュールを組んだ日程表を見せてきた。  何だよ。この無駄な能力は。  できた作家の早期入稿のような日程が組み込まれている。これから約ひと月、私は自分磨きというタワシでこすられるのだ。  ――そんなものでただれた身が浄化されるわけなどなかろう。  乾布摩擦だったらどんなにマシか。  イベント配布の『結婚祝い』と熨斗のある全力推しCPタオルを断腸の思いで使うのに。着飾り、着こなし、いい匂いがして、人科・美人種にこの私、鉄壁の腐女子が係わるなど恐れ多く、せめて上唇の上にあるうっすら髭は剃らねばなるまい。  まともな世界で生きている女性にあれこれされると思うと死にたくなったし、係わらせてしまってごめんなさいだ。  唯一の慰めは『全力お勧めのアニメのネイルをしてもらおう』それだけだった。
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