1.こんにちはハニーライダー

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***  ホテルを出たのは朝だった。他の人に見られたら困るだろうからと、ホテルを出たら知らない人のふりをして違う道を歩いていく。  おじさまは俺のことを気に入ったらしく通常料金の他にお小遣いと次回指名の予告までしてくれた。  俺も、おじさまのことは嫌いではなかったし、お小遣いまでくれるなんて良客。ぜひ次回もご指名いただきたいところだ。  見上げれば秋晴れの心地よい空に、朝日が眩しい。目を細めようとした瞼の動きが鈍く、そこでようやく身体が疲れているのだと実感した。  なにせ寝ていない。ホテルでもおじさまは寝ていたが俺は眠らなかった。同じベッドで横になって眠ったふりをしていても、警戒センサーは研ぎ澄ませている。そりゃ、気は抜けないだろ。何があるかわからなくて怖い。  このままどこかで一眠りしたいところだったが、まだ仕事が残っている。朝日に浄化され賑やかではなくなった繁華街を歩いて、ウルフライダーに向かった。
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