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閉店の看板がかかっているにも関わらず中に入ると、閑散とした店内に古狼と先輩従業員のサーヤがいた。
「おつかれ、飯あるぞ」
俺の姿を見るなり、古狼はそう言って手招きをした。カウンター席に座れ、ってことだろう。
俺はサーヤの隣に腰掛けて、カウンター向こうに立っている古狼に話しかけた。
「今日の飯なに?」
「ビーフステーキとガーリックライス」
「朝から食うもんじゃないねー、それ」
疲労困憊した身体に濃すぎる、朝日に不似合いなメニューだと苦笑する。
「なんだ、文句をつけるのか?」
「まさか! 古狼サマの飯、ありがたくいただきます」
従業員が戻るのに合わせて用意していたらしく、既にビーフステーキとガーリックライスは完成していた。あとは温め直すだけ。ラップフィルムがかかったプレートを手に古狼は厨房に戻っていく。
古狼が引っ込んだところで、俺はカウンターに突っ伏しているサーヤを見た。どうやら寝ているわけではなさそうだ。
この人も俺と同じオメガだけど、違うのは性別だけ。年齢も俺より上の先輩だ。
この店のマスターである古狼を除いて、ここで働いている人はオメガ性のみ。
オメガであれば男でも女でも構わない。むしろ好都合だ。セックスの相手に女を求める人もいれば、男を求める人もいる。女は乳房が大きいから良いだの、男の方が挿入時の感度がいいだの意見は様々。どちらもアルファが挿れるのに変わらないけどね。ともかくそういう訳で、男女問わずオメガを受け入れている。
サーヤもウルフライダーに所属している女オメガだ。華奢な体つきと乳房の大きさがウケて、出勤してもすぐに店からいなくなる売れっ子の先輩。少し性格はキツいけど、面倒見はいい。
そんなサーヤがこうして突っ伏しているのだから、何かあったのかと気になってしまう。俺のことを可愛がってくれる先輩だけに放っておけない。
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