1.こんにちはハニーライダー

17/22
前へ
/173ページ
次へ
「番になるだけなら、誰だっていいじゃん。それこそ道行くアルファに番募集のチラシでも配ってさ」 「嫌よそんなの。やっぱり運命を待ちたいじゃない」 「運命ねぇ……」  オメガと番になれるのはアルファ性を持つ者だけ。その仕組みは、アルファを引き寄せる発情フェロモンと重なっていて、世の中うまく出来ているものだ。  サーヤは仕事でアルファと寝ながら、運命の番相手を探している。そのアルファがどれだけ器量良しだろうが経済的余裕があろうが、誰も選ばなかった理由は一つ。それが『運命』。 「出会った瞬間にビビっとくるんだっけ? なんだか嘘っぽい話だけど」 「運命の番は会った瞬間にわかるらしいわ。勘みたいなものですって。あともう一つは、身体の相性」 「なにそれ初耳」  運命の番とやらに焦がれて、すっかり乙女モードになったサーヤがうっとりとした顔で語り出す。  面倒な話だなと思いながらも、こうやって落ち込んでいる人の特効薬は話を聞いてあげることだ。気が済むまでサーヤの話を聞くことにする。 「運命の番とのセックスは普通じゃないのよ。ただ指先が触れているだけなのに身が捩れるほど感じてしまって、指先が離れても感触が残る。それは絡め取られてしまうみたいに」 「うわ、エロ本の世界みたい」 「それが本当にあるんですって。触れられた場所に感触が残り続けるものだから身動きも出来ないの。それぐらい頭がおかしくなって、乱れて……そういうものらしいわよ」 「サーヤ姐さんはもちろん未経験なんでしょ?」 「残念ながらね。番相手とのテンタクルセックス、憧れちゃうわ……」  羨望の息と共に、サーヤは再びずるずると突っ伏していく。一通り愚痴を吐いてすっきりしたのか、その顔は先ほどよりも晴れているように見えた。
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

547人が本棚に入れています
本棚に追加