14.さようならウルフライダー

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「ありがとうございます」  実月がハニーライダーに口をつけている間、古狼が俺に向き直った。 「流加。この保護協会クソガキに騙されないようにな。こいつ、甘い面しておいてやることエグいぞ」 「あー……うん」  エグいよね、知っているよ。さすがに言うことはできなかったので、心中で同意しておいた。 「お前のいない間、保護協会のバッジつけたこいつが何度も店に乗り込んできてな」 「実月、そんなことしてたの?」 「流加くん、誤解しないでくださいね。僕は調査に来ただけです」 「何が調査だ。しっかり証拠握りしめて乗り込んできただろうが」  実月の腹黒さを知ってしまったので想像がついてしまう。策士の顔をしてここにやってきていたのだろう。 「ねちっこく店を潰そうとしていたのに、今は興味がないときたもんだ――まあ、予想はつくがな」  言い終えて、古狼はため息を吐いた。  俺をちらりと見てから実月に言う。その声色から怒気は抜けていて、冷えたカクテルと似た、心地よいトーンだった。 「流加は解雇だ。こいつはカクテルすら作れないお荷物だからな、番にされたお手付き荷物を置く場所はねぇんだよ」 「そうですか。残念ですね」 「……白々しい。それが目的だろ?」  実月は薄ら笑みを浮かべて「どうでしょう」と返し、誤魔化すようにグラスに口をつけた。  重たかった空気が緩和されたことで、黙っていたサーヤが顔をあげた。 「流加、よかったね」 「サーヤ姐さん……うん、ありがとう」 「そこのワンちゃんもさ。流加のことよろしくね。それから、ありったけのエリートアルファをかき集めて私のために合コン開催してね」  俺たちを祝うのか欲望の垂れ流しなのかわからないな。姐さんらしいけど。 「ええ。でも合コンは――なるべく頑張ってみますが、エリートアルファの上司たちにはお相手の方がいらっしゃるようなので……」  それを聞いてサーヤが再びカウンターに突っ伏す。「あああ……なんでどいつもこいつも幸せになっていくのよぉ……」とぶつぶつ呟くのが聞こえてきたが、知らないふりをしておいた。
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