14.さようならウルフライダー

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「僕たちはそろそろ帰りましょうか」 「代金はいらねぇよ。祝ってやる」  グラスが空になり、ウルフライダーの開店時刻も近づいていた。  俺たちを見送るためにカウンターから出てきた古狼が、扉の前に立つ。  そして俺の頭をわしわしと撫でた。 「ま、たまには顔でも見せろや。そこのクソガキもな。いつでもハニーライダー作ってやる」 「ありがとうございます。また飲みにきますね」 「おう。またな」  扉を開ければ、繁華街の空気が流れ込んでくる。鼻にツンと凍みる寒さも一緒に。  俺の居場所となっていたウルフライダー、古狼とサーヤ。その温かさを知っているから、振り返ってしまえば泣いてしまうかもしれない。 「流加くん、行きましょう」  俺の前には、大好きな人がいて、俺に手を差し伸べている。可愛い顔している癖に、腹黒だったりするけど。  手を繋げば、次の居場所はもっと温かいのだと教えてくれているようで、絡めた指先に力を込める。  離したくないと思うのは幸せなことだろう。  いや、きっと逃げられない。 「帰りにビール買っていきましょうか。観たい映画があるんです」 「また、ノンアルコールビール買ったりして」 「ありましたね、そんなこと。ちなみにあれは天然ですよ」 「……それは本物だったのかよ」  子犬になったり、策士になったり、かと思えば触手のように絡みついてくる。  でも、どんな実月でも好きだ。繋いだ手に幸せを感じてしまうほど。  神様のギャンブル・ルーレットが、落ちる。  そうして俺が支配したものは、運命の触手様。
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