1.こんにちはハニーライダー

19/22
前へ
/173ページ
次へ
 がっついて食べていると、古狼が笑った。 「さっきの話だけどよ、」 「俺とサーヤ姐さんの? やだぁ、盗み聞き」 「お前たちがデカい声で喋るからだ。厨房まで聞こえてくるんだよ」  古狼は気まずそうに笑って、カウンター下の冷蔵庫から取り出した瓶ビールを俺の前に置いた。  俺の好きな輸入ビールだ。ライムも一緒に出てくるのが嬉しいね。 「それで。お前は番が欲しくねえのか?」 「んー……」  サーヤの話を何度も聞いていたし、ウルフライダーのオメガたちが番を求めていることも知っている。番に関する知識はそれなりにあると思う。  だからこそ、俺は首を横に振った。 「いらない」 「……へえ? そりゃまたどうして」  皆から番の話を聞くたび、俺は番なんて必要ないと思うようになっていた。  番とは一人のアルファと結ばれるもの。一度番になってしまえば解消することは出来ない。  例えば結婚なら、相手のことが嫌いになれば離婚して解消することが出来る。それが番では離婚不可なのだ。一生を捧げなければいけない。  おまけに不倫は禁止。番相手となったアルファ以外とセックスすることは出来ないのだ。試みてしまえば、吐き気や悪寒、痙攣などの様々な症状がオメガに襲いかかる。  この厄介な不倫禁止令はオメガのみでアルファには通じない。アルファは番以外とセックスしても、何の症状もでないのだ。さらにアルファは他にも番を作ることが出来て、他のオメガも番にすることが出来るのだ。  この仕組みは、オメガとはアルファに飼い慣らされる存在なのだと示しているようで、俺はあまり好きではなかった。  飼い慣らされるのではなく、俺が支配者でありたい。だから番に興味はなかった。
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

547人が本棚に入れています
本棚に追加