1.こんにちはハニーライダー

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 カウンター席に座った男二人を横目に見る。  こいつらは、ハズレ。神様とのギャンブルに負けた奴らだ。  この世界は男と女がいる。男性女性に差は対してなく、体つきや機能が違ったとしてもそこまで問題はない。社会のヒエラルキーを決定づけるのは男性女性でもなく、器量良しでも性格良しでもないのだ。  重要なのは男女それぞれに与えられるアルファ・ベータ・オメガの三種の性だ。どの性を与えられたかによって人生が決まる。  これは神様とのギャンブルだ。生まれた瞬間にルーレットが回り出し、俺たちの知らない間に勝負は始まっている。だから後は願うだけ。どうかハズレを引かないようにって。  くじのほとんどはベータで、ハズレ。残念ながらこれを引いてしまえばごく普通の生き方しか出来ない。 「ほんっと、部長は頭にくるよ」 「お前の部署、締め切り近いからな。みんなカリカリしているんだろ」  何も聞こえない置物のふりをして、グラスを磨く。会社と上司の愚痴に一生懸命なベータ二人はなんて哀れなのだろう。  社会の頂点に立つ人間というのは決まっている。人を従えるために生まれた、圧倒的な力を持つ者。残念ながらベータは頂点に立つことが出来ない。しみったれたバーで愚痴ばかりこぼしているベータは、頂点の人間に従う運命なのだ。  もしもベータに生まれていたのなら、俺もこうして愚痴ばかり吐いていたのかもしれない。社会に嘆く二人の話を聞きながら、ベータに生まれなくてよかったと考えていた。
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