2.やさしさに溺れて

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 さあ、井戸を覗く時間だ。俺を招いた理由はこれなんだろ、と実月に視線を送る。  じっとりと誘うように見つめながら考える。風呂は指示されたら入るか。ブルゾンは脱いでおこう、邪魔だもんな。あとは―― 「流加、くん」  実月に名を呼ばれ、絡まる視線。そこに熱が生じているかを探りながら、俺は必死に井戸の底を探す。  そして実月は――俺に手を伸ばした。 「はい」 「……ん?」  俺の前でぴたりと足を止め、何かを求めて手のひらを差し出している。宿泊費の請求か、なんて考えていると実月が言った。 「上着。かけておきますよ」 「あ、ありがと……」  迫られるかと思っていただけに拍子抜けだ。まさか上着を渡せ、って意味だとは。  ぽかんとして眺めていると、服をかけ終えたところで実月が振り返った。 「では。もう遅いので、僕も寝ますね」 「……え?」 「隣の部屋にいるので、何かあったら声をかけてください。おやすみなさい」  あっさりと実月は部屋を出ていって、ドアが閉まる。
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