2.やさしさに溺れて

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 なんだか調子が狂う。ヤらないで泊まる、なんて滅多にないことだ。  汗と酒で汚れた服を脱いでベッドに倒れ込む。ふかふかのベッドに身を預ければ、石鹸の爽やかな香りが鼻をくすぐった。 「あー……ホテルより落ち着くかも」  こんなにも気持ちいいベッドは久しぶりだ。野宿でもいい、なんて言っていた実月がこんな快適空間に住んでいるなんて信じられない。  見上げた天井は綺麗で――これがアルファとオメガの違いなのだと見せつけられる。あの時、実月の手を掴んでいなかったら俺は公園で星空の天井を眺めていたかもしれない。  アルファはオメガを支配したがる。だから実月も、俺を支配しようとしているのかもしれない。快適な寝床を与えて、気が緩んだ頃に襲いかかってきたり、なんて。  身を預けた寝具は柔らかく、俺の警戒心を包み込む。起きてなきゃ、相手はアルファなんだから。そう言い聞かせても、キングサイズの誘惑には勝てなくて、体と瞼が重たくなっていく。  眠気と戦い何度か意識を失いかけて、ようやく。寝ている間に襲われてもいいやと諦めて、掛け布団をかぶった。
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