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『今日は泊まるところあるか?』
「んー……」
『こっちはサーヤがきてる。あと一人くる予定だが、泊まるところがなかったらお前も来ていいぞ。店員オーバーだが、なんとかなるだろ』
古狼の家は何度か行ったことがあるので知っている。あのクソ狭い部屋に、ガタイのいい古狼とその他三人なんて無理だ。立ったまま寝ろってか。
それでも俺を受け入れようとしているのは、急遽閉店することになった申し訳なさからだろう。
ぱっと見れば強面の古狼だが、面倒見がいい。優しすぎて、無理してでも人を助けようとするところがある。行き先のない俺やサーヤを拾ったのも、古狼の優しさだ。これ以上、甘えるわけにはいかない。
「俺は大丈夫。泊まるところあるから」
虚勢を張って、明るい声を出すよう努めると、電話の向こうで古狼が安心したように息を吐いた。
『それならよかった。じゃ、また明日連絡する』
「あいよー。明日はお店開くといいな」
『任せとけ。なんとかする』
そして、電話は切れた。
目的地は変更だ。ウルフライダーに行こうとしていた俺は踵を返す。
スマートフォンを操作して、泊めてくれそうな友達に連絡をしながら、繁華街をうろついた。
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