3.おともだち、友達

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「好きなところに座っててください。用意しますね」  コンビニの袋をテーブルに置いて、実月がキッチンに引っ込んでいく。  手持ち無沙汰な俺は大きなテレビを正面に構えたソファに座り、リビングを見渡した。  ダイニングと繋がった広めのリビング。家にこだわりがないなんて言いながら、見れば部屋のあちこちにこだわりがある。柔らかいクリーム色のファブリックソファにナチュラルカラーのテーブル。ベランダと繋がった窓にはプランターがいくつも吊られている。よく見れば、テレビの横にもベランダの前に。どこを見ても観葉植物の緑色が視界に入り込んでくる。 「植物好きなの?」  ビール缶とナッツの皿を持って戻ってきた実月に話しかけると、実月は頷いた。 「はい。たくさん置けば、外にいる気がして落ち着くんです」 「外に……ねえ」  少し距離を開けて隣に実月が座る。それからカシュ、とビール缶を開ける小気味よい音が聞こえた。  お。もう飲み始めたのか。じゃあ俺も――と手を伸ばそうとして気づく。 「あれ、ノンアル買ったんだ?」 「え?」 「ほら、ここ。ノンアルコールって書いてある」  俺が指摘すると実月は目を見開いて缶を確認し、それから苦笑した。 「あ、はは……間違えちゃいました……」 「確かに似てるけどさ」 「他のもノンアルコールかもしれませんね……」  実月は立ち上がりキッチンに戻る。  冷蔵庫の開く音、それからため息が聞こえて俺は察した。 「……全部ノンアルだった?」 「全滅です。お会計の時に安すぎておかしいなとは思ったんですが、そういうことだったんですね」 「いやいや! そこで確認しようよ!」  間抜けな実月に笑いながら、俺もノンアルコールのビール缶を開ける。  アルコールなしなんていつ以来だろう。ウルフライダーに勤めてからほぼ毎日酒を飲んでいたからな。  ノンアルコールと言いながらも味はビールそのもので、違うのは飲んでも酔わないことだけ。味が一緒ならいいか、と俺は乾いた喉にビールもどきを流し込んだ。
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