3.おともだち、友達

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「ぶっ……い、い、いきなり、こここ恋人!?」 「そこまで動揺することないでしょ。こんだけ広い家に住んでて、いい年齢で……恋人いそうじゃん」  俺が投げた直球に、実月はもじもじと照れている。こういう話に慣れていないのかな、こいつ。 「こ、恋とか……付き合うとか……そういうのはよくわからなくて」 「え? 童貞? 嘘でしょ、アルファなのに」 「どどどどっ――げほっ、げほ」  全然言えてないどころか、ビール吹き出してむせてやがる。  もしかして、本当に童貞なのか。からかいすぎたかもしれないな。 「ヘンなこと聞いちゃってごめん」 「だ、大丈夫です……そういう話にあまり慣れていなくて……」 「だろうね。あんたの狼狽えっぷりでよーくわかった」  二十八歳童貞アルファ。こんな可愛い顔して未使用って、オメガより希少価値高いんじゃないか。 「仕事ばかりの生活なので……友達すらいないんです、僕」  おいおい。友達までレベル下がったよ。って友達もいないのか、こいつ。  俺が知っているアルファの常識がことごとく覆っていく。何者なんだよ、実月って。 「友達もゼロって……じゃ、なんで俺を家に呼んだの?」 「それは――」  俺が聞くと実月は俯いた。ビール缶を両手で握りしめて、それからゆっくりと言葉を紡ぐ。 「僕の一方的なものかもしれないけど、仲良くなれそうだなって思ったんです」 「俺と?」 「はい。流加くんと話していると面白くて、楽しい気分になれて……だから友達になりたいなって」
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