1.こんにちはハニーライダー

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 このコースターには意味がある。この店が持つ裏の顔――デートクラブだ。  ドリンクを頼み、付属してきたコースターに丸印を書いて渡せば、デート可能なキャストのカタログをもらうことが出来る。そこに載っているのは、古狼以外のこの店にいる人間たちの顔写真だ。  気に入ったキャストを選んだら再びコースターに番号を書く。実月が宝箱だと例えた場所だ。それを渡せば契約成立。晴れて好みの人間と熱い夜を過ごせる。  だから宝箱の中身は、俺たちなのだ。  デートクラブといいながらやることは一つなので、食べられてしまうことは当たっている。  ウルフマークは可愛いものではない。むしろ傲慢で、金と社会の汚さをよく知っている。  間抜けなのは、あんたの方だよ。一杯目を飲み干す実月を眺めながら、声に出さず悪態をつく。 「流加」  そこで古狼が俺を呼んだ。 「指名が入った。頼むぞ」 「……あいよ」  アルファもどきの可愛い小型犬とお話をしている間に、俺は宝箱の中身になっていたらしい。  ちらりと見れば、カウンターの奥に男が座っていた。少し太ってはいるが、身なりはなかなか。着ているスーツはイタリア製。空気は――間違いない、アルファ。これは楽しめそうだ。  俺は、実月に挨拶をしてから控え室に引っ込んだ。  今日の内勤はこれでおしまい。あとはイタリアスーツのおじさまに熱い営業だ。
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