4.支配されたよる

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4.支配されたよる

 勘では、明日の昼もしくは夕方ぐらいに発情期に入ると思っていた。これはまだ予兆にすぎないのだ、と。  実月と友達になったとか、実月を信じているとか。そんな雑念たちと一緒に布団に入って眠ったものだから、俺は何も気づいていなかった。  まだ慣れないベッドルームにキングサイズのベッドと――次に俺の意識が戻った時、それは変わっていた。 「ん……さむ……」  眠りに落ちていた頭は寒気で呼び起こされ、寝ぼけ眼で掛け布団を探す。腰のあたりまで手を伸ばしてみるが掛け布団はなく、睡眠で温まっていた体が妙に冷えていた。  苛立ってさらに手を伸ばせば――熱く、ぬるりとしたものが指に当たった。脈打つそれは弾力があって、柔らかな布団とは大違いだ。  そして。ずる、ずる、と身体中を這う感触。布団ってこんなに絡みつくものだったか? なんて寝ぼけた頭で考えて、気づく。  これはおかしい。普通じゃない。布団がずるずる動くわけないし、絡みついたりもしない。  眠気も一気に吹き飛んで、何が起きているのかと確認するべく起きあがろうとした時だ。 「っ、いてぇ……」  両腕が、動かない。正確に言えば重たいものに押さえつけられている。ずっしりとした重みが両手首にかかって、固められてしまったみたいに。  さらに身体にも、重たい何かが伸し掛かっている。足を動かそうとしてもそれが邪魔をして動けない。 「なんだよ……だれ?」  正体を確かめるべく視線を動かし――驚愕した。
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