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その日はいわゆる煩悩の種とやらを没収された後、俺と仲本は語り合った。
「マル、お前なんで不良なんかしとんねん」
「じゃ仲本、お前はなんで貧乏なんかしとんねん」
「そんなもん家が貧乏やねんからしゃーないがな」
「ほんなら俺も言うたろ、そんなもん家がヤクザ屋さんやねんからしゃーないがな」
「そうなんかマル」
「なんや、ビビったか」
「いや、お前、じゃ将来ヤクザなるんか」
「アホか、あんな儲からん商売誰がするかい」
「なんや、ヤクザて儲かるんちゃうんか」
「あのな、じゃグローブとバット持って野球しとったら誰でも球団から金貰えるんか」
「それは…有り得んな」
「せやろ、ヤクザかて同じじゃ、人騙して嵌めて引きずりおろして、最悪弾いて上にならな金なんか儲かるかい」
「んなら、なんでそんなしょーもない不良の真似事なんかしとんねん、やめたらええやんけ」
「別に好きでしてるんちゃうがな、いいなぁと思う、服装や、音楽を、世間が勝手に不良言うだけじゃ」
「そうやな、裸に剥いたらただの漫画オタクやもんな」
「アホかお前に言われたないわい」
そんな話をしていると、引き戸の向こうに人の気配がした。
「ささ、食事の準備が整いました、食堂まで案内いたしまする」
ジジイが食事の知らせにやってきたのだ。
「やったー腹減って死ぬか思たわ」
かなり空腹だった俺は飛び上がって部屋を出ようとする、それを見た仲本がなんだか怪しい含み笑いをした。
「なんや仲本、その笑いは」
「まぁ・・・食堂行ったらわかるわ」
俺たちはジジイの後を歩いた。襖が開かれ中に招かれると、俺は朱塗りの盆に用意されたご膳を目の当たりにした。
「なぁぁぁ!、なんじゃこりゃぁぁぁぁあぁぁぁぁ」
朱塗りの盆に用意されている品目、
お粥・・・
塩昆布二枚・・・
高野豆腐二切れ・・・
味噌汁・・・
以上。
「金返せゴゥラァァアァ」
咆哮は、虚しく、虚しく廊下に消えた。
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