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「くっそー・・・ひもじい・・・ひもじい・・・うきっぃぃぃぃい!ゴォウラァァァ!!起きろ仲本!」
「なんやねんマル、余計に腹減るだけやぞ」
「じゃかましいわい!アホンダラ!カバンじゃ!カバンを奪還に行くぞ!」
俺は足音を消すために靴下だけを履き廊下に出た。
「冗談やないわい、十日やぞ十日、なんとかして鞄を奪還せねば、んなもん餓死してまうわい!育ち盛りの中学生なめんなよ!」
しかし、普通のホテルとかなら貴重品の保管場所の想像もつくのだが、ここは寺である。
部屋から抜け出してはみたものの、何処に何があるのやらまるで想像もつかない。
「くっそー、鳴かぬなら・・・鳴かせてみせようホーホケキョ、見てろ糞坊主」
寺の朝はそう早くない、朝六時起床、寺院周辺の清掃、住職の法話、写経、お百度参り、水行、川行、滝行、腹式呼吸による発声練習、読経、瞑想法指導、ヒーリング、こんなところだった様に思う。
俺は早起きは得意な方なんでそれ自体苦にはならないんだけど、朝、目が覚めた時の猛烈な空腹は本当に耐え難かった。
すきっ腹のまんま掃除、それが終わってやっとこ飯なんだけど、朝なんて海苔と漬物と味噌汁だけ。なんだかしんないけど翌日の朝からお粥ではなく玄米に変わった。
仲本みたいにこんな自虐的なアホな事をする奴はめったにいないだろう。
しかし、次に誰かが来なけりゃ、江戸ジジイが貴重品をどこに隠しているか調べようがない。
俺は昼飯の後、江戸ジジイに日程を訊くように装い、ジジイから情報をリーク出来ないかどうか試みた。
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