マルと仲本

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電話を切る頃、丁度ジジイと孝弘が部屋を出ていく。 俺は二人の行方を目で追った。 ジジイが孝弘の荷物を何処に運ぶのか・・・ ジジイが木枠の窓の視界から消えると俺は慌てて外に・・・ ん?・・・ え?・・・ あぁぁぁぁあぁぁぁ!!!なんやねん! カウンターに電話を置こうとすると、俺のカバンが、無造作にカウンターの下に放置されているではないか! おいおいおい・・・ 扱いがええ加減すぎんかい・・・ いくらお菓子と煙草とエロ本とはいえ、お客様の手荷物やろぉぉぉぉ! まぁ、この際そんな事はどうでもいい。 この千歳一隅のチャンスを逃す愚かはない。 俺は作務衣の懐にお菓子を詰め込んで部屋を出た。 ヨッシャー、食料ゲットや・・・と思った瞬間、俺は重大な問題を抱えてしまった。 「バリバリ・・・カサカサ・・・クシャクシャバリクシャパリ」 音が・・・ 袋が擦れる音が・・・ どうにもなんねー ばれるよな、これ・・・ しかし隠す場所なんか何処にもない。 俺は諦めて煙草とライターとスニッカーズ一個を懐に残し後は全部カバンに戻した。 なーに、場所は確認出来たのだ、その気になればまた取りに来れる。 俺は写経に戻った。 その日、写経の後は山岳修行だった。修行ったって山の中歩くだけだけどな。 疲れるんだわこれ。 途中、滝の側で瞑想をやってその日の修行は終わり、やっとこさの夕飯まで俺と仲本はフラフラで部屋に戻る。 スルスルー 古い障子の扉は驚くほどスムーズに開く。 余程手入れが行き届いていないとこうはいかない。 ん・・・ うぎゃゃやぁぁぁぁ!!!! 小暗い部屋の角に誰かが項垂れて足を抱える様にすわっている。見るとそれはフランケン孝弘だった。
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