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1-2. 「大人不在」の物語
グリム童話では赤ずきんのことを「誰でも一目見れば誰でもこの子が好きになってしまう」と書いている。
つまり、容姿には大変恵まれた少女だったようだ。トレードマークとなる赤い頭巾(一説には帽子とも言われている)を被り、森の中ではかなり目立つ存在であったことは明白である。
また、保護者である母親の言動についても疑問を持たざるを得ない。好奇心や誘惑への自制心が育ちきっていない幼い少女を、一人で森へ送り出すという行為には、保護者としての責任も問えるのではないだろうか。
赤ずきんの母親は、後述するが(実母なのか配偶者の母なのかは不明ではあるが)赤ずきんの祖母にあたる女性に対して、あまり接点を持たないようにしていたと考察できる。
このような事実から見えてきたことは、円満な家庭環境とはいえず、かといって機能不全ともいえない家庭環境であったという点だ。
人を喰らうという狼が現れる森に、母は子を一人で向かわせ、祖母は森の中の家で一人で待つという状況は、赤ずきんに起きた一連の悲劇が偶発的なものではなかったと証明している。
1-3. 赤ずきんの性質・性格
母親から祖母の元へ遣いに行くように依頼された際、赤ずきんは、
・外では行儀よくするように
・見舞い品の葡萄酒の瓶を割らないように走ってはならない
・祖母の部屋に入るときは挨拶をするように
・祖母の部屋を興味本位でキョロキョロ見ない
という注意を受けている。
おそらくは歳相応の活発な、目の前のことに集中すると周りへの注意がなくなってしまう、マナーは二の次という子供らしい性格なのだと思われる。
そして、森の中では狼と会話するシーンでは、
・狼という生き物を知らない
・森が狼が出没する場所だということを知らないため、無防備に散策してしまう
・散策中に花畑で花を摘むことに夢中になり、祖母宅に向かうのが遅くなる
赤ずきんの教養は基本的レベルよりやや低く、母親も狼の危険性を伝えずに遣いに出したことが判明する。
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