赤ずきん研究 【10代目赤ずきん】

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「というのが、赤ずきん研究してきて、最近思ったことなんだけど」 ふわふわした癖毛の銀色の髪を持つ黒縁眼鏡の青年は、犬歯を覗かせて言う。 そんな彼は今、衣服を着たまま、板張りの床に四つん這いになり、腕をふるふると震えさせている。 「おばあちゃんの存在について問題提起したのは、面白い。あのおばあちゃんのことは、何の史料もないからね」 少女と呼ぶべきか女性と呼ぶべきか難しい年頃の娘は、長い黒髪の上に、見かけとは不釣り合いな幼さを感じさせる赤い帽子を被り、エプロンドレスを身に纏っていた。 そんな彼女は今、床に四つん這いになっている青年の背中を椅子代わりにして、足を組んで座っていた。 「そこで、今日は10代目赤ずきんとなった君に、初代『赤ずきん』とその祖母について、どう思ってるか聞きたいと」 部屋の窓辺からは、傾きかけた太陽の光が射して、埃が音もなく舞うのが見えた。 「ただねー、森の中では赤い頭巾は悪目立ち、って感じの言い回しは気に入らない」 10代目赤ずきん、と呼ばれた娘は、組んだ足を振り子のように前後に揺らしながら言う。
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