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だが、やはり未波に拒否する権利は有るわけもない。
「どれくらい出向するんですか?」
「うん。次の人が見付かるまでだから、そんなにかからないよ」
どうも軽さの目立つ本間の言葉は、今ひとつ信用に欠ける。
だが、そうも言えずに、現実を見るしかない。
「それで、今抱えている仕事は、誰に引き継げばいいんでしょうか?」
抑えられずに、つい声音が皮肉っぽくなった。
だが課長は、あっけらかんと返してくる。
「ああ、それは佐藤さんに預けてって。
それと引継ぎは、午前中に済ませてよね」
はい。
口では頷きながらも、やっぱり内心で溜息をついた。
そして、それからの3時間。
未波は、お世辞にも優秀とは言い難い入社2年目の後輩に、
半ば、やけくそ気味に、少なくはない仕事を押し付けていく。
そして、ようやく半泣きの後輩に、取り敢えず一通りの仕事を
渡し終えたところで、計ったように昼を知らせるチャイムが鳴った。
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