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いくつかの会社が混在する、27階建ての大きな総合ビル。
その中で未波の勤める本社は、6階分を占める。
そしていつもは、その最上階にある共同食堂で昼を取るのだが、
この日はビルの中にいるのが癪で、財布を片手に外に出た。
まったく、もう。
なんで抱えてる仕事が少ないあの子じゃなくて、私が出向なわけ?
昼休みに賑わうオフィス街で、ブツブツとそんな事を頭に巡らせ店を探す。
だが昼時は、どこも混雑しており、店によっては既に行列も出来ている。
それに何より、どうにも食欲がない。
そうして気付いてみれば、未波は、小一時間ただ街を歩いていた。
なんかもう、踏んだり蹴ったり。
いっそのこと、学生のようにこのままサボれたら――。
しかし、そこまで無責任に子供じみることもできない。
だから結局、何も口に入れないままに昼休みを終え、
当座の私物を小振りの段ボールに入れると、
「頼むね」という課長の軽い口調に送られ、1階のメール室へと向かった。
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