1 負の連鎖

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「失礼します。総務部から来ました、米倉です」 午後の仕事が始まったばかりで、どこかまだ、まったり感のある部屋に 声を掛ける。 そして、一斉に視線を向けられた未波を、 部屋の奥から、初老の男性が手招きしてきた。 「あぁ、米倉さん。待ってた、待ってた」 ゴマシオ頭に、黒縁メガネ。 昭和にタイムスリップしたような容貌の男は、 歩み寄ってきた未波を、ニコニコと迎える。 「ようこそ、メール室へ。課長の矢代です」 そして、荷物は適当に置くようにと言ってくる。 しかし、私物の中には貴重品も入っているし、 やはり自分の居場所に置いておきたい。 だから、「よろしくお願いします」と挨拶に続いて、 未波は当然の事を尋ねた。 「あの、私のデスクはどこでしょうか?」 ところが、彼女の問いにちょっと目を瞠った昭和課長は、 いきなり声を上げて笑いだす。 「ここの仕事はね、1日の大半を立ってるからね。 個人のデスクは無いんですよ」
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