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「こちら、辻上さん。
他社の人なんだけどね、ウチの部署のエース」
顔の造作は、悪くない。
いや、むしろぎりぎりイケメンに入るのかもしれない。
それに背だって低くはないし、力仕事をやっているからだろう。
作業着の上からでも、引き締まった体格が見て取れる。
だが、そんな好ポイントなど霧散するほどの無愛想。
しかも、未波がきちんと挨拶をしたにも関わらず、
ジロリと睨むような視線を投げたと思うと、微かに頷いただけ。
その上、明らかに近寄るなオーラを振りまいてくる。
な、何? コイツ。
なんとも剣呑な空気を纏う男に、少し尻込みをしつつも未波もカチンときた。
だが、そんな彼女の内心など、全く気付いていないのだろう。
昭和課長が、相変わらず暢気な口調で続ける。
「いやぁ、先月まで、もう一人、男性スタッフの方がいたんですよ。
でも腰を悪くして、お辞めになっちゃいましてね。
だけど、さすがに4人だとキツくてキツくて。
ずっと人事にお願いしてて、やっと来てもらえて助かりますよ」
その言葉の通り、それからは、怒涛の「労働」が未波を待っていた。
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