88人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
本当に、不思議だなと思った。
両手で、すっぽりと覆えてしまうほどの小さな命なのに、
冷たく凍えた彼女の心に、優しい温もりを与えてくれる。
返ってくる言葉があるわけでもないのに、
毎日、「おはよう」「行ってきます」「ただいま」と声を掛けると、
喜んでくれるように思える。
お蔭で、ずっと引きずっていた元孝への未練までが、
気付けば嘘のように消えていた。
そうして、小さな緑の命を迎えて半年後。
未波は、新しい恋と出会った。
士業との合コンだよ。
高校からの仲良しの弓香から誘われたのは、新たな年を迎えた1月中旬。
弁護士、税理士、会計士。
こうした「士」のつく、いわゆる高スペックな肩書きを持つ男性たちとの
セッティング。
しかし未波は、少し躊躇した。
最初のコメントを投稿しよう!