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翔は、自分の肩書きを鼻に掛けたり、未波を見下すことも全くなく、
いつも優しく、紳士だった。
未波もまた、彼が「好きだ」という手や爪の手入れは、
それ以来、念入りにするようにもなった。
そして、彼との交際が続く中、
自然と未波の中でも「結婚」という未来が浮かんでいた。
しかし、そんな彼と付き合うこと3年足らず。
出張に行くからと、デートを断られた先週末。
次回のデートで行こうと約束をしていた街中で、
楽しげに別の女性とデートをする翔と偶然会ってしまった。
それは、ちょうどネイルサロンからの帰り道。
曲がり角での、出会い頭の鉢合わせ。
もう、互いに逃げようがなかった。
その上、やっぱり未波の頭も心も、瞬時に凍り付くように空白になる。
その結果、彼女は一言も発することなく、その場から走り去った。
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