1 負の連鎖

6/15
前へ
/21ページ
次へ
翔は、自分の肩書きを鼻に掛けたり、未波を見下すことも全くなく、 いつも優しく、紳士だった。 未波もまた、彼が「好きだ」という手や爪の手入れは、 それ以来、念入りにするようにもなった。 そして、彼との交際が続く中、 自然と未波の中でも「結婚」という未来が浮かんでいた。 しかし、そんな彼と付き合うこと3年足らず。 出張に行くからと、デートを断られた先週末。 次回のデートで行こうと約束をしていた街中で、 楽しげに別の女性とデートをする翔と偶然会ってしまった。 それは、ちょうどネイルサロンからの帰り道。 曲がり角での、出会い頭の鉢合わせ。 もう、互いに逃げようがなかった。 その上、やっぱり未波の頭も心も、瞬時に凍り付くように空白になる。 その結果、彼女は一言も発することなく、その場から走り去った。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加