1 負の連鎖

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負の連鎖。 なんとも嫌な響きを持つこの言葉が、 週明けの朝一番に、未波の頭に浮かんだ。 「米倉さん。 悪いんだけど、今日からしばらくメール室に出向してくれる?」 週末の失恋から癒えない気持ちのまま出社して早々、 呼ばれた課長から、なんとも不可解な事を頼まれる。 確かに、いま未波が所属するのは総務部だし、 メール室も総務部の管轄課の一つだ。 しかしそれは、あくまでも組織の便宜上。 名前の通りに「郵便物」だけを扱うその部署は、 仕事的に総務と絡むことは何もない。 だからメール室は、事実上、仕事も場所も全てが独立している。 そんな所に、なぜ未波が出向になるのか。 しかも、いきなり今日から――。 だから、当然ながらその疑問は、彼女の口から素直に零れ出た。 「あの、どういう事でしょうか?」 しかし、あろう事か、この疑問に課長の本間は首を捻った。
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