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「それがさぁ、金曜の夕方に突然、人事から一人出向に出せって
依頼があってね。
それでその条件が、人当たりが良くて明るく、新しい環境にも慣れやすい人
っていうのでさ」
「それが、私っていうことですか?」
「だってこれ、人事部長、直々の依頼だからさぁ。
変なチョイス出来ないでしょ?
その点、米倉さんは人柄的にも申し分ないからさ」
未波は顔しか知らないが、確かに、わずか40歳で人事部長になった内川は
社内でもトップクラスの出世頭。
もちろん切れ者というのは、疑う余地もない。
そして、その内川部長よりも数年先輩であるはずの本間課長にしてみれば、
これは、願ってもない点数稼ぎのビッグチャンスともいえるのだろう。
だが、次に続いた本間の言葉に、未波は内心小さく眉をしかめた。
「なんかさ、シルバーさんが一人、辞めちゃったんだって」
私、シルバーさんの代わり?
別に、シルバーさんを見下している訳ではない。
それに未波は一般職だし、抱えている仕事も
彼女しか出来ない類のものでもない。
しかし、入社してもう4年。
肩書きも、経験も不要として雇われているシルバー人材と同一視されるのは、
さすがにプライドが傷つく。
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