1 負の連鎖

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「それがさぁ、金曜の夕方に突然、人事から一人出向に出せって 依頼があってね。 それでその条件が、人当たりが良くて明るく、新しい環境にも慣れやすい人 っていうのでさ」 「それが、私っていうことですか?」 「だってこれ、人事部長、直々の依頼だからさぁ。 変なチョイス出来ないでしょ?  その点、米倉さんは人柄的にも申し分ないからさ」 未波は顔しか知らないが、確かに、わずか40歳で人事部長になった内川は 社内でもトップクラスの出世頭。 もちろん切れ者というのは、疑う余地もない。 そして、その内川部長よりも数年先輩であるはずの本間課長にしてみれば、 これは、願ってもない点数稼ぎのビッグチャンスともいえるのだろう。 だが、次に続いた本間の言葉に、未波は内心小さく眉をしかめた。 「なんかさ、シルバーさんが一人、辞めちゃったんだって」 私、シルバーさんの代わり?  別に、シルバーさんを見下している訳ではない。 それに未波は一般職だし、抱えている仕事も 彼女しか出来ない類のものでもない。 しかし、入社してもう4年。 肩書きも、経験も不要として雇われているシルバー人材と同一視されるのは、 さすがにプライドが傷つく。
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