9.急展開

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9.急展開

飯島課長は、 「江草さんは、たしか警視庁入庁されて15年目でいらっしゃいますね。私は、神 奈川県警本部勤務だが、約20年です。今、電話で島中刑事の捜査内容に驚いて らっしゃったんじゃないでしょうか。実は、島中刑事は、警察庁のキャリア組で世 にも聞かれる腐敗をなくす為に10年前にいらして下さった方です。この事を私と 江草刑事とでしまっておきましょう。もちろん今回は、残念でしたし、私個人的に も何度か無理しないように捜査員をつけると何度も催促したんですが。彼、どうし ても以前のおそらく警察庁で、職務のミスで同僚の信頼を失い悔いが残らないよう に何度もやりとげたいと懇願されましてね。」 と言い、窓の外を見つめ泣きそうな表情だった。 そして、さらに 「でも、江草さん。今後我々ももちろん尽力しますし、期待してますよ。江草さん の活躍は、私たち神奈川県警にとっても頼みの綱ですから。まあ、何かございまし たら、私にでも気軽にご相談下さい。」 と言い、江草刑事は、 「有難うございます。んーしかし、この事件を。うーん。この事件を必死にあの彼 がと思うと、胸が痛いですねえ。彼のためにも、否、私自身のためにもやります。 飯島課長、すぐにでも彼のことを教えて下さり有難うございました。失礼しま す。」 と言い、やや涙目になりそうな顔をはらいのけながら談話室を後にした。  そうこうするうちに、夜遅くなり、江草刑事は、神奈川県警本部を出て、帰路に ついた。  あっという間に、神奈川県警の捜査一課はもちろん、多くの捜査員でこの事件を 追いかけて2週間が経った朝早く、ビッグニュースが県警本部に入った。  警視庁が、元交通大臣峰岸 昭信氏を逮捕したのだった。この逮捕ニュースは、 江草刑事にとっては、しまったとも、ほっとした複雑な心境になっていた。  江草刑事は、警視庁よりの出向だが、今の状況と条件ではかなり追跡が難しく なってしまっていた。なぜなら、彼なりにここ2週間程必死に行方不明の瀬野 義 之と彼の同僚大北正雄がこの逮捕された峰岸 昭信氏の記事作成共同者であること がつかみとれ、かなりの高い確率で糸口がつかめると確信してきた矢先に起こった ためである。
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