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7.事件の追跡中
車で神奈川県警本部へ戻ると、秋山刑事が、
「これは、江草刑事お疲れ様です。横波署どうです?」
と聞いた。すると、江草刑事は、横波署の水上刑事とさきほど話してきたことを
言った。
それを聞いた秋山刑事は、
「やはり、さすが横波署の水上さんだ。あ、そうです。これ、私の部下が把握して
おいた木ノ内産業オーナー 木ノ内 忠行のをどうぞ。」
と地場産業の案内で詳しく紹介されていた新聞記事や企業機関誌をくれた。
江草刑事は、
「ありがとう。参考にさせてもらいます。」
と伝えた。
そして、江草刑事は、秋山刑事より受け取った新聞記事や企業機関誌に目を通し
た。地場産業の紹介欄には、昭和2年4月28日生まれの75歳で、昭和38年に
創業し、昭和40年代のオイルショックの頃に食品関連の消毒用エタノール商品が
安定して売れ業績を伸ばした木ノ内産業が記載されていた。東京の江頭橋区出身
で、戦後まもなく高校卒業で、家族は東京大空襲で亡くし自分自らの手と足で当時
の基幹産業の鋼鉄工場で日夜働いていたらしい。そして、木ノ内氏が、30歳つま
り昭和32年頃に鋼鉄産業の下請け企業を創立し、後ほど木ノ内産業の共同経営者
の化学者比呂 広嗣と出会い消毒用エタノール商品を開発し創業したらしい。企業
機関誌には、神奈川県知事賞を平成15年に受賞されて笑顔で写っていた。木ノ内
氏は、毎年何回も受賞を断ってきたが、それは先に病死していた比呂氏のことを配
慮してきたことと彼への哀悼の念から抜け出す勇気で受賞しようと今回決意したと
も掲載されていた。それから、しばらく、江草刑事は、机上のパソコンで捜査情報
の処理をしていた。
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