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社宅の荷物は殆んど処分して、父や母の位牌と写真、そして最低限必要な電化製品と自分の身の回りの物だけで、小さな古民家に引っ越した。
「これだけが新品だわ」
都会とは違いプロパンガスなので、コンロは買う必要があったのだ。後は、社宅で使っていた冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、鍋二つと、フライパン一つ、ヤカン…… 古びた台所用品が、リフォームされた台所に不似合いだと、引っ越しのダーボールから取り出しながら苦笑する。
和室には、引っ越し業者が積み上げたダンボール箱が山になっている。
「かなり処分したつもりなのだけど……」
蒲団袋から全て取り出すと、外の物干しに掛けておく。日当たりは良さそうだ。何もさえぎる物がないのだから当然だと、文子は笑う。
冬服はダンボール箱のまま押し入れの下に突っ込み、春夏物を押し入れ収納ボックスに入れていく。あらかた片付いた部屋を見渡して、何処に位牌を置こうかと悩む。
二間続きの和室と、小さな台所。冬は寒いと聞いたので、台所に近い部屋に家具風コタツを持ってきた。台所にはテーブルを置かず、コタツが食卓がわりになる。となると、寝るのは押し入れのある奥の和室になる。
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