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「そうですよ。人生、何かにいつも追いかけれているようなね」  私は冷たいジャスミンティをストローで啜りながら、語ってしまった。  私も高給取りになっても、結局何かの呪縛から逃れる事は出来ない。 自ら、早期定年を希望してよかった。    これはこれで、後でまた違う苦労が待っているかもしれない。しかし、一度、心が休まりそうだ。  いつクビを切られるのだろうと、怯えて暮らす事はもうない。そして、いつでもこのナポリタンを食べに来る事ができる。  幸い、贅沢しなければ食べていけるだけの貯えは、今まで作って来た。これだけでも良しと、気を取り直す。 「僕なんか、あんまり貯金ないですからねぇ。あぁーあ、来月から群馬か」  ため息を漏らす彼に、女性店主は告げた。 「あら、すぐに仕事があるだけでも幸せな事よ。給料面の事はマイナスになるかもしれないとしても、仕事があるのは幸せな事」
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