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 意表をついたのか、加賀見君の目は丸くなった。彼は今までそんな風にアドバイスしてもらった事がないのだろう。 「見知らぬ土地でもね、住めば都。群馬は群馬できっと自然が豊かで、おいしいものも沢山ある筈。 ほら、おっきりこみ鍋とか、焼きまじゅうとか、こんにゃくとかね。あとね、群馬県は日本一のパスタ県なんですって。 うちのナポリタンより、おいしいナポリタンやパスタがあるかも」   「へぇ!」  また加賀見君は先ほどとは、違うリアクションをした。物知りだなと尊敬するような目で、彼女を見る。加賀見君の瞳に少し、元気な光が戻ってきたようだ。  この人は若いのに、人間ができていると思う。 「私はこのナポリタンが、日本で一番好きですよ。娘が大好きだったからね。これからも食べにきます。ここにきてるとね、娘も一緒にこれを食べてると感じてしまうんです」  私は目を細め、最後のひとかけらのピーマンを口に入れた。このケチャップに絡んだ苦みがまた、美味。
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