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 大丈夫か? と、労わるように汗で張り付いた前髪をかき分けるやさしい指を捉まえて唇で触れる。たどたどしく肌の表面に舌を這わせると、意図が伝わったのか、すぐうえにある喉仏がぐるりと動いた。 「……ごめん。ちょっと今、余裕ないかも」  これまでに聞いたことのないつやを帯びた低い声でつぶやくと、まだ少しためらいがちにゆっくりと腰を揺らめかす。汗でひかる首すじに腕を絡ませて、その律動に身を委ねていると、つながった下肢ではじける、まだ快楽とも付かないぴりぴりとした熱と痛みに自然と声がもれた。 「……っ、んん、……っ、あっ……」 「……真紘……まひろ……」  うわごとみたいに名前を呼ぶ穂高の頬をはさんで、自分からキスをせがむ。律動のリズムに合わせて、重ねた唇のあいだで歯がかち、かち、とぶつかる音さえ深い官能を呼び起こした。  そうしながら、穂高にやっと会えた、と思う。  一昨日のバスターミナルで、昨夜の電話で、今日の舞台のうえで何度も会いたい、と思った穂高に。──そうして、あの夏からずっと会いたいと願い続けていた穂高にやっと今、本当の意味で会えた、と。 「……穂高……好きだよ……」  もはや呼吸もままならない状態でそれだけ告げると、真紘のうえで動いていた穂高がふと、俺も、と唇だけで応えて笑う。そのあとは、よりいっそう激しくなった抽挿と、ふたたび下腹部に伸ばされた手に文字通りすべてを持っていかれ、気付いたときには、さっきよりずっと高い頂点にまで押し上げられていた。
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