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『進路のこととか、たまたま相談に乗ってもらう機会があって、それで色々話を聞いてもらってるうちに、……好きになってた』 (そういうことか……)  疑う余地はないと思った。誠が想う相手は芳崎なのだろう。  佳人は疲れた笑いを洩らした。これはもう、多分運命なのだ。 「全部、聞いてるんじゃないの。それとも俺の口から謝罪が聞きたいってこと? 誠を傷つけてごめんなさいって?」 「――なんの話だ」  芳崎は露骨に眉を顰めて佳人を見る。その非難じみた目が辛くて、痛くて、余計に攻撃的な言葉を放ってしまう。  「別に隠さなくたっていいのに。良かったじゃん。誠と仲良くなったんでしょ。俺はお役ご免てことだよね」 「どういう意味だ」 「そのままだよ。誠がいるのに俺に構ってるヒマないでしょ。俺たちは、…別につきあってるってワケじゃないんだし、カラダだけの関係なんだから」  ピシッと音を立ててその場の空気が凍りついた気がした。芳崎が持っていたカップを、静かにテーブルに置く。 「――ああ、そうだったな。忘れてたよ。お前は誠君の代わりに、俺の相手をしてくれてたんだったよな」  聞いたこともないような冷たい声音に心臓が凍りつく。眇められた目が、静かに佳人を捕えていた。  芳崎の整った顔は、表情を消すとこんなにも怖いのだと初めて知る。芳崎はいつも優しく笑っていたから。
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